悪意の不法行為の意味
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項2号)。
「悪意」とは、単なる故意(不法行為によって損害を加える認識・認容)ではなく、積極的な害意と考えられています。
使用者責任(民法715条)について免責を認める考え方
使用者責任のように、他人の行為について破産者が責任を負う場合には、その他人が悪意でも、破産者が悪意で加えたとは認めらず、損害賠償請求権は非免責債権とはならないと考えられます。
参照『破産法・民事再生法(第2版)』555頁「伊藤眞」(株)有斐閣
損害についての認識の有無について各人毎に個別に判断をして、免責を認めた裁判例
横浜地裁川崎支部平成30年 4月19日判決は以下の通り、現金を還流させてこれを詐取することの認識はなく,本件架空取引が原告の簿外資金(裏金)を作出するために協力するものであると信じて本件架空取引に関与した者について、その財産権を侵害して損害を発生させる不法行為をすることを認識し,これを認容していたと評価することはできないとして、免責を認めた。
「a社の代表取締役である被告Y4は,本件架空取引が架空の取引であることを認識していたものの,被告Y1の私的な利益のために被告Y1に現金を還流させて被告Y1がこれを詐取することの認識はなく,本件架空取引が原告の簿外資金(裏金)を作出するために協力するものであると信じて本件架空取引に関与したと認めることができる(認定事実(1)イ,ウ,エ(イ)a,c(b),d,e,オ,(3)ア。原告も,被告Y1が,真実は,自己及びその家族の遊興費などに消費する意図であったのにこれを秘して,被告Y4及びa社の取締役であり,被告Y8社の代表取締役である亡Cをして,原告の簿外資金作出への協力であると誤信させて,架空取引の限度で共謀して,本件架空取引を行った旨を主張しており,被告Y4もこれを争っていない。)。
しかるところ,被告Y4が信じていた同被告の上記の認識によれば,原告が簿外資金を得るために本件架空取引によってa社に一定額の手数料を支払って原告に現金を還流させることを自らの判断によって行っていたというものであって,それによって原告に財産権上の損害が生ずることにはならず,また,本件架空取引について原告自らが主導していたというのであるから,現実には,a社が架空取引としての架空請求によって原告をしてa社に金員を交付させたことによって原告に損失が生じており,前記のとおり,被告Y1との関係においては,損害が発生しているといえても,被告Y4は,原告に対してその財産権を侵害して損害を発生させる不法行為をすることを認識し,これを認容していたと評価することはできない。
そうすると,被告Y4による本件架空取引の関与について,被告Y4に不法行為の故意があるということはできないから,当然,それを超えて,原告に対して積極的に損害を与える意思で不法行為を行った(悪意で不法行為を加えた)と認めることはできない。」
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